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借り過ぎ予防のチェックポイント
2023年5月21日金利の水準が低くなっている今日この頃は、借り入れ金額100万円あたりの返済額が以前よりも下がっています。
そのため、金融機関やエリアによっては、年収に対して7~8倍以上の住宅ローンを借りることも不可能ではなくなっています。年収に対して融資を受ける倍率を「年収倍率」と言いますが、この年収倍率が高くなればなるほど借り入れの金額も多くなり、返済期間が長くなる、そのため、当面の負担が軽くなりやすい変動金利型の住宅ローンを借りるという傾向が強くなっています。
たとえば、ざっくりですが、年収600万円(35歳)の人が、4,200万円のローンを借りたとした場合の年収倍率は約7倍になります。仮に返済期間が35年だとすると、
60歳定年時(25年後)のローンの残高は約1300万円強です。
この金額をどのように思われますでしょうか。
ちなみに退職金が2,000万円以上出る勤務先はとても少ないです。
中小企業ですと1,000万円程度が平均で、1,500万円出れば御の字です。
退職金の額は業界にもよりますので一概に言えませんが、この金額が60歳時点で残った時に退職金を全て充当しても下手すれば一部残ります。
ちなみに、変動金利の場合は金利の上昇次第ではもっと残る危険もあります。
これでは退職金が住宅ローンの支払いだけでほぼ底をついてしまうという危険性があることはお分かりいただけましたでしょうか。
身の丈に合わない、年収倍率が7~8倍の住宅ローンを借りて購入してしまうと最悪の場合は破産もあり得ます。
そして、私はマンションの管理会社に勤務していた時よく、景気や会社の倒産などで管理費が支払えず、売って出ていった方も見てきました。売って負債が無くなれば御の字ですが、残ってしまう場合の方が多いのが現状です。
そのような憂き目に合わないためにも、住宅ローンの借り過ぎは危険だということを肝に銘じていただきたいです。
もう少し具体的な事例を出させていただきますと、2020年に新型コロナウイルス感染症が流行したときに、飲食業界や旅行業界などで収入が激減したことがありました。その時に住宅ローンの返済に苦しむこととなった人が泣く泣く住宅を手放すということが多く発生しました。
現在では新型コロナウイルス感染症による経済活動の停滞は解消に向かっていますが、今後もさまざまな事態に世界経済が危機に陥ることが容易に想像できます。
今この時に収入が安定している、先輩方の昇給状況は良い、ということだけをもって、安易に多額の住宅ローンを組んでしまうことは避けていただきたいです。
そこで、下記のチェックポイントを示してみました。
☑ 返済負担率が手取り年収の25%を超えている
☑ 住宅ローンの借り入れ金額が年収の7倍以上である
☑ 住宅ローンの完済時の年齢が65歳を超える
☑ ボーナスの返済額が手取りボーナスの半分以上を占めている
☑ 変動金利や金利選択型のローンの返済期間が30年以上である
☑ マンション購入後、手持ち資金が100万円以下になる
上記のチェックポイントで、3つ以上当てはまる場合は、購入する物件の金額を下げていただくことをおすすめします。
無理な住宅取得になってしまっている可能性が高いです。
住宅展示場や販売会社提携のファイナンシャル・プランナーに甘い言葉で購入を促されてしまってはいませんか。
私の過去の相談者様から聞いた話ですが、教育費を500万円程度に想定されていたり、老後資金は1500万円程度と漠然と根拠の薄い金額だけで、今後のリスクを全く考慮せずシミュレーションしていたり、とあります。
最近では、6000万円のマンションの購入を検討されていた方から相談を受け、シミュレーションをしてみると危険だということをお話し、取得するマンションの金額を下げたりといったこともありました。
マンション購入後に、困難な状況に陥らないようにするためにも、ぜひ上記のチェックポイントを確認いただいて、無理のない資金計画をもって、マイホームを購入されることをおすすめします。